個人情報保護方針


 

経営講座の第107回目です。
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Question
顧客情報の流出

当社に勤めていた従業員が転職し、ライバル会社に入社しましたが、
その従業員が持ち出した当社の顧客リストがそのライバル会社で使用
されていることが発覚しました。
 顧客リストを収納している棚には鍵をかけ、 リストには社外秘との
表示を行い、 その取扱いには慎重を期するよう周知する等、きちんと
管理していたつもりでしたが、このような事態となってしまいました。
 ライバル会社に対し、当社の顧客リストを利用しないように要求する
ことはできないのでしようか。

Answer
不正競争防止法による措置を講じることができる可能性があります。
解説をご確認ください。

 不正競争防止法は「営業秘密の侵害」や「原産地等の偽装表示」、
コピー商品の販売」等の不正な競争を規制することで、経済の健全な
発展に寄与することを目的とする法律です。
今回はその中でも、「営業秘密の侵害」についてご紹介いたします。

 不正競争防止法では、 企業が持つ情報が不正に持ち出される等の
被害にあった場合について、民事上・刑事上の措置が定められています
ただ、それらの措置の対象は、不正競争防止法でいう「営業秘密」に
該当している情報に限られます。この「営業秘密」に該当するには、
以下の三つの要件を満たしていなければなりません。

営業秘密の三つの要件
@【秘密管理性】・・・秘密として管理されていること
A【有 用 性】・・・有用な営業上または技術上の情報であること
B【非公知性】・・・公然と知られていないこと

@【秘密管理性】について
 営業秘密を保有している企業の秘密管理意思が、秘密管理措置に
よって従業員等に対して明確に示され、当該秘密管理意思に対する
従業員等の認識可能性が確保される必要があるとされています。
 つまり、その情報を秘密として管理していることが従業員に認識できる
状態となっていなければならないということです。
 貴社の場合、顧客リストを収納している棚に鍵をかけ、リストに社外秘
との表示を行い、その取扱いには慎重を期するよう周知していたとのこと
ですので、転職した方を含んだ従業員の方々は、貴社が顧客リストを
秘密として管理していることを認識できていたと考えられます。

A【有 用 性】について
 情報自体が客観的に事業活動に利用されていたり、 利用されることに
よって、経費の節約や経営効率の改善等に役立つものであることとされ
ています。一般的に、「顧客リスト」はこの要件を満たしていると言われ
ています。

B【非公知性】について
 保有者の管理下以外では一般に入手できないこととされています。
貴社の顧客リストは、この要件を満たしていると考えられます。

 このように考えると、ご質問にあった貴社からライバル会社に転職した
方は、貴社の「顧客リスト」について、責社の秘密管理意思を知った
うえで取得した可能性が高いといえます。
また、ライバル会社としては、貴社から転職してきた者が持ち込んだ顧客
リストが「貴社の営業秘密にあたるのではないか」と、通常は疑うべき
ともいえるでしょう。
 貴社の「顧客リスト」が上記@〜Bの要件を満たしたうえで、その他、
不正競争防止法で定める「不正競争」や「営業秘密侵害」等の要件に
該当すれば、貴社としては、転職者やライバル会社に対し、差止請求や
損害賠償請求といった民事上の措置を講じることが可能と考えられます。