個人情報保護方針


 

経営講座の第140回目です。
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Question
営業秘密の保護

●質問
営業秘密の保護ノウハウなど外部への漏えいを防ぎたい情報が
多々あります。 対策として、従業員とは入社時に秘密保持の
誓約書を取り交わし、退職時にも秘密保持契約を締結しています。
このような対策の効果はどの程度あるのでしょうか。また、これら
以外に有効な対策があれば教えてください。

Answer
秘密保持に関する従業員との取り決めだけでなく、秘密としたい
情報の管理を徹底することも必要です。
●解説
(1) 従業員に対する情報漏えい対策の必要性
従業員は日常の業務遂行において多くの情報に接します。ご質問
にあるような経営に深く関わるものもあれば、例えば会社の所在地
や電話番号など、通常は公開されている情報もあります。
これらの情報全てに統制をかけ外部に流出しないようにするというの
は現実的でなく、法律上も合理的なものとはいえません。かといって
何の対策も講じなければ、経営上極めて重要で秘匿しておきたいと
考えている情報が流出しても、会社として法的なアクションが 取れな
いということになりかねません。そこで、「秘密」と評価できる情報に
限って、外部に漏らさない法的義務を従業員に課すという手法が
採られることとなります。
ご質問にある、従業員個人との秘密保持に関する取り決めもその
1つです。また、そのほかに、不正競争防止法という法律によって
営業秘密の保護が図られているため、順に解説します。
(2) 従業員個人との秘密保持に関する取り決め
従業員個人と、入社時及び退職時に、「職務上知り得た秘密を外部
に漏えいしない」旨を取り決めておくということが広く行われています。
これらは法的には、従業員との秘密保持契約あるいは特別の合意
として扱われ、法的な効力が認められることが通常です。した がって
、取り決めた内容に従業員が違反した場合、損害賠償請求等が
可能で、取り決めておくことの意味は一定あるといえるでしょう。
ただ、秘密保持に関する取り決めでは、秘密となる情報を細かく
指定するというよりも、一般的な内容となっていることが通常です。
特に、入社時は、従業員本人が今後どのような情報に触れるか
明らかになっていない部分も多く、秘密となる情報の詳細を指定
するこ とは難しいでしょう。
また、退職時も、退職する従業員が職務中に触れた情報全てを
把握していることはまずないでしょう。行ってきた職務内容や会社
内でのポジションなどから、漏えいを禁止する具体的な情報をある
程度指定することはできても、一般的な秘密保持規定にも頼ら
ざるを得 ません。
秘密となる具体的な情報全てを指定できないとなると、会社の
情報が従業員から流出した場合に、その情報が秘密として扱わ
れるべき情報かどうかで認識の違いが生じる可能性があります。
最終的に裁判等に発展した場合でもこの点が問題になるため、
従業員との秘密保持の取り決めだけではリスクの回避にはなお
不十分といえるでしょう。
漏えいした情報が秘密として扱われるべきと判断されるための
要素はいくつかありますが、その情報が社内でどのように管理
されていたのかが特に重要となります。例えば、会社として秘密
と主張していても、その情報に社内の誰でもアクセスできるような
状況だと、 秘密として認められる可能性が低くなってしまいます。
秘密としておきたい情報は、実際にも厳格に管理しておくことが
重要です。
(3)不正競争防止法による営業秘密の保護
社内での管理状況は、不正競争防止法にも関わってきます。
不正競争防止法は事業者間の公正な競争を確保するためにいく
つかの行為を禁止しており、その中に、営業秘密の不正取得等も
含まれています。禁止される行為に該当した場合、 不正競争
防止法に基づき、損害賠償請求や差し止め請求を行うことが
できます。
ただ、不正競争防止法では、従業員との秘密保持の取り決めの
場合と異なり、対象となる秘密(営業秘密)が明確に決められてい
ます。 「秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の
事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と
知られていないもの」という定義です。つまり、不正競争防止法上
の営業秘密として扱われるためには、「秘密として管理されて
いる・・・情報」でなければならないということです。
この条件は、会社における情報管理の状況から判断されます。
つまり、「この情報は一般的に営業に重要」「普通は秘密である
ことがわかるような情報」というだけでは営業秘密には該当しな
いということです。 あくまで、「自社において秘密として管理され
ている情 報」でなければなりません。例えば、その情報にアクセス
できる従業員を限定する、保管しているファイルに秘密である旨
の表示をしておく、その情報の利用や持ち出しの履歴を記録
して追跡できるようにしておく、といった管理上の措置です。
どのような管理措置を講じれば営業秘密と判断されるかについ
て、明確な決まりがあるわけではありません。特に重要なものは
情報に触れられる従業員を制限することだとされていますが、
それも含め、可能な限り厳格に管理することが肝要です。
(4) ご質問の場合
以上を踏まえると、ご質問の場合も、秘密として管理したい
情報を具体的に決めたうえで、それらに厳格な管理措置を
施すことが必要といえるでしょう。その際、特に、その情報に
アクセスできる従業員はどこまでなのかを確認することが
重要です。確認の結果、不必 要に範囲が広いということで
あれば、例えば、幹部しか扱えないようにする、一般の従業員
が利用する場合には管理職の許可を得る仕組みとするなど
、制約を設けることが望ましいでしょう。