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経営講座の第152回目です。
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物流業界の2024年問題
当社は貨物運送を行う会社です。法令等の改正による2024年
問題が注目されており、当社も対応を進めているところです。
ただ、細かなルールも多く全体像がなかなかつかめずにいます。
お客様に2024年問題について説明する機会も増えると思います
ので、法令等で決められているルールの概要と詳細を教えて
ください。また、お客様(荷主企業)にも改正の影響は及ぶので
しょうか。2024年4月1日からスタートする法令の改正により、
自動車運転の業務に従事する従業員(ドライバー)の 労働時間に
関する規制が厳しくなります。結果、ドライバーの働く時間が短く
なり、それをきっかけとして物流が滞るのではないかと懸念され
ています。これが「物流業界の2024年問題」と呼ばれているもの
です。会社の経営活動も含め、社会生活一般に広く影響を与え
る可能性のある「物流業界の2024年問題」ですが、きっかけが
法令の改正であることから、まずは改正内容についての正しい
知識を得ること が重要です。また、運送業を営む会社だけでなく
荷主として荷物の輸送を依頼する会社にとっても注目すべき
ポイントがありますので、あわせて解説します。
◆改正される2つの法令
2024年問題を引き起こす原因とされる法令の改正は、大きく
次の2つです。
労働基準法による労働時間の上限規制
自動車運転者の労働時間等の改善のための基準 (改善基準
告示)の厳格化この2つはいずれも自動車運転の業務に従事
する従業員について、労働時間を短くするよう企業に求めるもの
です。業界の自主的なルールではなく法令の改正ですので、
運送事業を営む会社としては従わざるを得ません。その結果、
運送業界全体でドライバーの労働時間の減少が進み、物を
運びにくくなると予想されています。両者とも2024年4月1日から
適用が始まるため、この問題は「2024年問題」と呼ばれています。
2024年問題は、運送事業者・荷主・一般消費者・ドライバーのそれ
ぞれに、次のような悪影響を及ぼすと懸念されています。
まず、運送事業者は、自社のドライバーの労働時間が短くなる
ことにより、労働量が不足する可能性があります。改正後は労働
時間に上限ができるため、現在その上限を超えて働いている
ドライバーや上限に近い労働時間のドライバーについては、労働
時間の短縮を行う必要があります。また、その短縮の結果、
上限よりも短い労働時間で働いているドライバーの労働時間が
延びるという事態 が考えられます(短縮した分のカバー)。ですが
労働時間の長時間化を不満なく受け入れるドライバー ばかりと
は限らず、長時間労働が生じて退職するドライバーも出てきてしま
うかもしれません。そうすると、人手不足に陥ってしまいます。
労働量の不足や人手不足は、受け入れることのできる荷物量に
影響してきます。運ぶことのできる荷物の量が減ってしまえば、
それは売上の減少につながります。さらに、業界全体の労働量・
人手不足・売上の減少は、ドライバーが働く環境の悪化やタイト
な輸送スケジュールにもつながります。そうなると、事故のリスクも
高まってしまいます。このような運送事業者への影響が、荷物を依頼
する荷主にとっては、「運んでもらいたいときに運んでもらえない」
という不利益となって現れます。また、荷物の受け取り手となる
ことの多い一般消費者は、例えば、翌日配送のサービスが終了
するなど物流サービスの低下に見舞われます。最後に、視点を
ドライバーに移します。改正後の労働時間の上限を超えている
場合や上限に近い労働 時間のドライバーにとっては、実際の
労働時間の減少が見込まれます。そうすると、残業代が今よりも
少なくなることで収入の低下が起こり得ます。反対に、改正後の
労働時間の上限よりもある程度少ない労働時間のドライバーは、
先の通り労働時間が長くなる可能性があります。 |
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