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経営講座の第83回目です。

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Question
賃借人が行方不明

当社が所有する不動産をAに賃貸しています。
しかし、Aは現在行方不明であり、家賃を1年以上滞納している状態です。
早く出て行ってもらい、新たな賃借人と契約を締結したいと思っています。
賃貸人として、Aの所有物を勝手に処分することができるでしょうか。

Answer
原則としてできません。解説をご確認ください。

 賃借人の部屋の中の物は貸借人の所有物であり、賃貸人が勝手に
処分し、強制的に退去させることはできません(自力救済の禁止)。
そうすると、賃借人に対し、部屋の明渡しなどを求める訴訟を起こす
必要が出てきますが、賃借人は行方不明のため、訴訟関係書類を
届けられません。

 この場合には、公示送達という手段を由し立てることになります。

公示送達は、次の@やAが原因で相手方に意思表示を到達させる
ことができない場合に、名宛人が出頭すれば送達すべき書類をいつでも
交付する旨を裁判所の掲示場に掲示することによ
つて行います。掲示を始めた日から2週間を経過することによって、
送達されたことになります。
@相手方が誰であるか分からないこと
A相手方の住所が分からないこと(相手方が法人の場合には、法人
および代表者の所在が分からないことが必要)

具体的な流れとしては、以下の通りとなります。
T賃借人は家賃を1年以上滞納しているので、滞納賃料の支払い請求
および賃貸借契約解除の意思表示を内容証明郵便で送ります。この
内容証明郵便は、賃借人が行方不明のため、受け取られることなく
賃貸人のもとに戻ってきます。
U 次に、未払い賃料の支払い請求および賃貸借契約終了(解除)に
基づく建物明け渡し請求訴訟を提起します。その際、戻ってきた内容
証明郵便と、被告(賃借人)の居住地や勤務先を調査した調査報告書
をつけて、裁判所に対し、公示送達の申し立てを行います。
V訴訟手続きが進められ、未払い賃料支払いおよび建物明け渡しの
勝訴判決を得ることができた場合、その判決に基づき裁判所に建物
明け渡しの強制執行を申し立てます。
W執行官により、建物明け渡しの強制執行の処理が行われます。処理
が終わると、賃貸人は建物を現実に取り戻すことができます。

以上のように、相手方が所在不明であっても、建物明渡しの手続きを
行うことは可能です。
ただし、上記Uの調査は、相手方の住民票に記載された住所に出向
いた上、ご近所の住人に聞き込みをしたり、郵便受けや電気メーターの
動きを調べたり、連絡の取れる親族に聞き込みをしたり、証拠写真を
撮っておくなどの取り組みが必要となります。