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経営講座の第114回目です。
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Question
契約の基本
先日、長年取引をしてきた会社と納品をめぐつてトラブルになりま
した。当社が納品する立場なのですが、今まで`納品にかかる
送料は相手の会社負担でした。今回も当然そうだろうと思い、
納品にかかった費用を請求したところ、払えないと言われてしま
いました。相手の会社に事情を聞いたところ、経費削減が必要な
状況で、 当社の部長に相談すると「今回から送料は負担しなくて
よい」旨を伝えられたとのことでした。 当社部長はその会話を
覚えており、確かにそう伝えたとのことでした。
最終的には社長も納得し、送料は当社の負担になったのですが、
そもそも部長が伝えた時点で送料の負担は変更されているの
しようか。 もしそうだたとすれぱ、 当社としても決裁の仕組み等
検討しなけれぱならないので、教えてください。
Answer
会社間の契約がいつ成立するかについては、様々な事情を考慮
する必要があります。詳細は解説をご確詔〈ださい。
1.契約の成立
契約は口頭でも成立するとよく言われます。特集でも触れたように、
これはほとんどの場合その通りで、契約が成立するためには、
基本的に書面も押印も不要です。
なぜなら、契約とは「当事者の意思の合致」であり、意思の合致
さえあれぱ他の要素は不要だからです。
※保証契約など、ー部例外があります。
2. 意思の合致の中身
契約における「意思」とは、 申込みとそれに対する承諾を指しま
す。ご質問の場合、
相手の会社の 「送料の負担をしてほしい」というのが「申込み」
貴社部長による 「構わない」というのが「承諾」に該当します。
ここで相手の会社と貴社の送料に関する意思が合致しているの
で、 この時点で契約が成立(厳密には変更)が起こります。
3.部長の権限
しかし、これはあくまで、部長がその契約をする権限を持っている
場合の話です。契約について権限のない人がいくら意思を表示
しても、契約の成立とはなりません。
特に会社組織の場合、実際に意思を表示する個人と会社とは法律
上明確に区別されています。そのため、代表取締役のように
法律上会社を代表する権限を持っている場合は別ですが、
例えぱ従業員個人が取弓先と話をまとめてきたとしても、 会社
が承認しない限り契約は成立しないといえます。
ただし、従業員も契約を締結する権限を持つことがあります。典型
的な場合としては、社内規程等で権限が与えられている場合です。
例えぱ、「〇円までの契約についての決裁権を与える」といった
内容です。 しかし、このように明確に決まつている場合は多くは
ありませんし、決まっている枠内でなされたことであれぱそもそも
問題はありません。問題となるのは、権限があるかどうか不明な
場合です。そのような場合、争いになれぱ色々な事情から権限
があったかどうかが判断されることとなります。
例えぱ、過去にその個人がどのような取引をしたことがあるか、
権限を持っている人と社内でどのようなやり取りが行われたか、
その人の役職やその人が普段どのような権限を持っているの
か、などです。
4.ご質問の場合
ご質問の場合、契約について貴社の部長に権限が与えられていた
のであれぱ、部長が {承諾した段階で契約が変更されます。
権限が与えられていない場合`様々な事情から判断されることと
なりますが、単に部長という役職だけで権限が認められることは
そこまで多くないと思われます。普段から契約に関して部長が
単独で行ったり決裁をしていたりという事情があれぱ、今回の
取引についてだけ権限がないというのは不自然です。しかし、
そういった事情がない場合、部長という役職には権限が伴わない
と判断される可能性の方が高いと考えられます。
とはいえ、社内で権限の配分につし`て明確にしておくことは重要
です。独断を防ぐということにもつながりますし、稟議の仕組みを
作り契約にー定の人数を関わらせることで、一人の場合よりも
安定した判断をすることができます。長年の取引先との無用な
トラブルを防ぐためにも、役職に応じた権限を定めておき、社内
での決裁の仕組みを確立しておくことが肝要です。 |
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