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経営講座の第136回目です。
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Question
監査役との関係

●質問
当社には監査役が現在2名います。取締役は全員身内なのですが、
監査役は外部の方に就任してもらっています。 現在のところ、監査
役の業務遂行に問題はないのですが、会社の財務状況がここ数年
芳しくないことから、監査役の報酬の引き下げを検討しています。
その際の手順や注意すべきポイントなどを教えてください。
Answer
監査役の報酬の決定方法はある程度法律で決められています。
詳細は解説をご確認く ださい。
●解説
(1)監査役の役割
監査役は取締役とは異なり、経営そのものを行うわけではありません。
取締役の行なった行為(職務執行)が法令や定款に違反していないか
をチェックする(監 査)ことが、監査役の主な役割です。この役割を適切
に果たすためには、監査役が取締役 からの圧力を受けないように
しなければなりません。そのため、会社法という法律では、監査役の
独立性を守るために様々な規定が置かれています。代表的なものは
監査役の任期に関する規定と報酬の決定に関するものであり、ご質問
にも関係するため、まずはその2つについて解説します。
(2)監査役の任期
監査役の任期は原則として4年とされています。ただし、株式を自由に
譲渡できない会社(非公開会社)においては、定款に定めることで10年
まで伸ばすことができます。 取締役の任期は原則2年となっており
(10年まで伸ばすことができる場合があることは 同様)、監査役の方が
長くなっています。さらに、任期に関する取締役との最も重要な違いは
、法律の原則的な任期を短縮することができるか否かにあります。
取締役の場合、定款か株主総会の決議によって、2年という原則の
任期を短縮することができます。一方、 監査役は、法律で定められて
いる任期を短縮することはできないと考えられています。つまり、何事
もなければ、最低4年間は監査役に就任し続けるということです。
これは、定款や株主総会の決議によって任期が短縮されると、監査役
が会社の顔色をうかがって適切な監査ができなくなるおそれがある
ためです。中であっても株主総会の決議によって解任することは可能
です。ただし、正当な理由がなければ、監査役から損害賠償請求を
受ける可能性があります。
(3)監査役の報酬決定
監査役の報酬は、定款または株主総会決議のいずれかによって決定
します。定款で定めている会社はほとんどないと思われ、通常は、
株主総会決議で決定されます。監査役個人の報酬を株主総会で決め
ることもできますが、報酬の上限額(総額)だけを決め、あとは監査役
自身に決定させることもできます。これらのルール自体は取締役の
報酬決定と同じです。ただ、取締役の報酬が株主総会の決議によって
行われるのは、取締役自身が報酬を決定すると過度に高額な報酬
となる 可能性があるため、それを防ぐ必要があるからです。対して、
監査役の報酬を株主総会で決めるのは、取締役が監査役の報酬に
関与しないようにするためです。取締役は監査される側ですから、
監査役の報酬決定に関与できるとなると、適切な監査が行えなくなる
ためです。したがって、株主総会で報酬の上限額を決めたあと、具体的
な報酬額を取締役が決めるということはできません。このような理由
から、ご質問のように複数の監査役がいる場合も、定款や株主総会
で個人別の報酬が決められていないのであれば、上限額の範囲内で
、監査役の協議によって 各監査役の報酬を決定することになって
います。反対に、株主総会や定款で決められた上限の範囲内で
あったとしても、取締役が決定することはできません。
(4)報酬の減額
株主総会の決議(やその後の具体的な金額の決定)を経て報酬額が
決定すると、その報酬額は監査役と会社との契約内容となります。
契約内容を当事者の一方が勝手に変更することはできないため、
監査役も会社も単独では報酬額を変更できないということになります。
つまり、会社が監査役の報酬額を減額したいと考えた場合には、
その旨を監査役に伝えて同意を得る必要があるということです。なお
、これは、株主総会で減額を決議した場合でも変わらないとされていま
す。もっとも、これは任期途中で減額する場合のルールであり、任期が
終わって再度監査役に選任されることになれば、その際に改めて株主
総会等を経て報酬額を決定することになります。 また、具体的な
報酬の決定には、それに関連した付随的な決まり事を付けることも
できます。例えば、報酬が職務内容によって変動する仕組みにする
ことや、報酬額を毎年決め直す旨などです。このような取り決めが
あれば、それに伴って任期の途中でも報酬額が変更されることが
あります。
(5)ご質問の場合
以上を踏まえると、まず確認すべきは、現状の監査役の報酬に関する
取り決め内容です。株主総会で具体的な金額が決められているので
あればその決議の内容、株主総会で上限額のみを定めている場合は
監査役との個別の取り決め内容(単年度か任期満了までかなど)に
沿って対応する必要があるためです。 これらの取り決めに特に条件
がない場合、任期途中の報酬減額は想定していないということになる
可能性が高いでしょう。このケースでは、監査役の同意を得て報酬を
減額するか、任期満了まで待って改めて報酬を決定し直すことが基本
の姿勢といえるでしょう。